何を育てるのか

2020.09.30 保護者の方へ

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 幼稚園はこどもの「何」を育てるのでしょうか。
 上記のように問われたとき、私は一貫して「人としての土台(基礎)を育てる」ということを伝えます。基礎ができていないのに闇雲に上屋を建てることはナンセンスだと考えるためです。これについては、積み木を思い浮かべていただければご理解いただけるでしょう。
 積み木はある程度の高さであれば簡単に積み上げることができ、いろいろなものを作ることができます。本園でも園児がよく遊び、様々な場所でも用いられている「カプラ」という積み木は、うまくいけば2m以上の高い塔を造ることができるのをご存知の方も多いでしょう。しかし、やはりしょせんは土台のない積み木です。少し押したり揺らしたりすると、たちまち崩れてしまいます。それはしっかりとした基礎の上に建てているのではなく、ただ単に基礎がない「上屋」を積み重ねているだけだからです。
 これに似たことで、聖書にはイエス・キリストのたとえ話としてこのような話が記されています。
 「そこで、わたしのこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどかった。」(新約聖書 マタイによる福音書7章24~27節)
 ここには「しっかりとした岩を土台にして家を建てた人」「砂の上という不安定な土地を土台にして家を建てた人」が出てきます。
 砂の上に建てた家は洪水や大風になすすべなく倒れてしまいました。不安定な砂を土台にして上屋を建てたからです。
 反対に、岩の上に建てた家はどうかというと、洪水にも大風にもビクともしませんでした。安定したしっかりした岩を土台にして上屋を建てたからです。
 「砂上の楼閣」という故事を思い浮かべる方も多いと思いますが、建物で最も大切なのは「土台・基礎」です。植物で言えば「根っこの部分」が最も大事であろうと思います。そしてそれは人間にも当てはまるのであり、幼児期というのは人間にとっての「土台・基礎・根っこの部分」を育てる時期なのです。
 この時期に何を育てるべきか。私たちはそのことを考えながら保育を行っているのであって、不必要に見栄えの良い「上屋」を育てるようなことはしていませんし、これからもそれをすることはありません。人としての「土台・基礎・根っこ」をつくるための保育を今後も推し進めていく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。