図鑑×本物=豊かな経験

2020.10.30 保護者の方へ

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 本園の園児は図鑑がとても好きだということを、以前にこの欄で書いたことがあります。様々な物ごとに興味を持ち、食い入るように図鑑を読むこどもたちの姿はさながら「小さな学者」です。知に対して良い意味で貪欲な姿を見るとき、常に学びの重要性を感じさせられます(幼児期に必要なのは「勉強」ではなく、日常生活・遊び等の中で興味を持ち、考え、試行錯誤することだということを日々園長として痛感しています)。図鑑というツールは、その意味で非常に有意義です。本園ではその考えのもと、数多くの図鑑を取りそろえ、こどもたちが読めるようにしています。
 なお、図鑑で知識を頭に入れることはできますが、それだけでは十分ではありません。図鑑を読むことにプラスして、本物に触れることも重要です。たとえば、図鑑は写真や絵が載っていますが、それは多くても1種類につき4~5枚の写真か絵しか載っていないはずです。それだけでは、そのものの特徴をすべて捉えることはできません。
 たとえばキノコ。写真のキノコはヤナギマツタケというキノコです。昨日堀川通の街路樹(トウカエデ)の根元に生えていたものです。直径約20㎝もある巨大なキノコです。図鑑と実物では様子が違い、私は当初これがヤナギマツタケだということはわかりませんでした(数冊の図鑑を見ても、これほど大きなヤナギマツタケは載っていません)。しかし、いろいろな特徴を勘案して、またこれまでのキノコ採集の経験を通して、最終的にヤナギマツタケであろうということを推定したのです(胞子を顕微鏡で確認したりDNA検査をしたわけではありませんので100%ヤナギマツタケであるとは断定できませんが、おそらくヤナギマツタケです)。日常的に実物に触れていないと、いざ本物に接したときに同定することはできません。図鑑という媒体と共に、実物に触れるという経験をすることで、こどもたちはこの上ない豊かな経験をすることができるのです。
 こどもたちには、その豊かな経験ができるよう園でも工夫を凝らしていきたいと考えています。